早生 |
「ご注文はお決まりでしょうか?」 |
祐佳 |
「……………………」 |
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祐佳のテーブルに来ても、祐佳はまだメニューとにらめっこを続けたままだった。 |
早生 |
「注文が決まったから呼んだんじゃないのか?」 |
祐佳 |
「きゃっ、お、お兄ちゃん? ど、どうしたの?」 |
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家族でも客は客。例え相手が親しく話しかけてきても、あくまでいつも通りの接客を…… |
早生 |
「お客さま、ご注文はお決まりでしょうか?」 |
祐佳 |
「……来てたなら、言ってくれれば良かったのに」 |
祐佳 |
「ずっと、見てたの?」 |
早生 |
「まさか。新米バイトでもそこまで暇じゃないよ」 |
祐佳 |
「良かった~」 |
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本当はずっと見てたようなものだけど、このくらいの嘘は気遣いの範囲内だと思う。 |
早生 |
「それでなににするんだ?」 |
早生 |
「……おっと、『ご注文をどうぞ』」 |
祐佳 |
「ええっと、それじゃあ……チョコレートケーキをドリンクのセットでお願いします……」 |
早生 |
「ドリンクは、なにになさいますか?」 |
祐佳 |
「あ……えっと、じゃあ、コーヒーを……」 |
早生 |
「あれ? お前、コーヒー飲めたっけ?」 |
祐佳 |
「え、あ、ならココアを……アイスで」 |
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“なら”ってなんだ、“なら”って。 |